地域を調査し、インフラを調べマニュアルを作成する

避難所マニュアルの地域特性と考え方

各避難所の避難所運営委員または自治防災組織は、その地域の状況に応じた運用が必要です。内閣府(防災担当)の「避難所運営ガイドライン」でも、市町村の避難所マニュアルを基本として、立地や規模などによって自主運営を促す考え方がとられています。

このページでは、避難所マニュアルを作成するにあたって、地域にあったマニュアルとは何か、どうやれば地域特性に合わせられるのか、災害時にはどのような状況(避難者数、インフラの損害、交通機関など)を想定して運営すべきなのか、どこまで何を書けばよいのか、どうすれば分かりやすく見やすいマニュアルが作れるのか、などを試行錯誤しつつ検討した資料を掲載しています。

この内容は、防災専門家ではない一市民であるサイト管理者が避難所マニュアルを書くにあたって考えたことの記録でもあります。これから避難所マニュアルを作成する方の参考になれば幸いです。

※重要:防災関連の情報は命に関わるため、誤った内容を載せるわけにはいきません。各種資料を調査する際は、調査結果だけでなく「情報の出典(一次情報)」を必ず記録しておくことが重要です。後から記述内容の根拠や出典を求められた際に記録がないと、再調査の手間が発生してしまいます。また、AIを活用してリサーチを行う場合であっても、必ず元となる公式情報や一次資料を直接確認・照合することが不可欠です。

1.他地域の避難所マニュアルの理解

避難所マニュアルを作ろうとすると、まず「どのような内容を書けばよいのか」というところから考えることになります。

1-1. 他地域の資料を調べる

そこで、全国の自治体や地域で公開されている避難所運営マニュアルを調べました。
参考として、本サイトの「各地の避難所マニュアル」のページでは主要なものを一覧化していますので、ご覧ください。

マニュアルには、避難所の開設手順、受付、避難者の把握、居住スペースの設置、トイレやごみの管理、食料・物資の配布、要配慮者への対応、情報の掲示、避難所運営組織など、共通している項目が多くあります。
一方で、地域によって災害の種類、避難してくる人の数、学校や体育館など施設の条件、自治体の支援体制などは異なります。そのため、他地域の優れたマニュアルをそのままコピーするのではなく、「何が共通していて、何が地域によって変わるのか」を考えることが重要だと考えました。

1-2.マニュアルの名前

避難所を開設して運営するためのマニュアルは、市町村によって名前が異なりますので、インターネットで検索する場合はキーワードに注意が必要です。以下はその例です。

避難所開設・運営マニュアル、避難所運営マニュアル、避難所運営管理マニュアル、防災拠点活動マニュアル、震災救援所運営管理標準マニュアル、救援センター開設・運営標準マニュアル、避難拠点運営マニュアル

1-3.マニュアルの構成

他地域のマニュアルは、内容そのものだけでなく、項目の構成や説明方法、図や掲示物の使い方などを知るための参考資料としても活用しました。
事前準備、本編、各班の行動資料、様式集、対象や状況毎のマニュアルなどがあります。

作業の手順の書き方は、読んだ範囲では以下のような書き方がありました。

  • 方針や原則論を書いている
    市町村のひな形マニュアルの例で、各避難所ごとに具体化することが前提です。
    (例: 「要配慮者の方への配慮も必要です。」)
    これだけでは具体的な行動を起こせないため、行動可能なTODOに落とし込む必要があります。、行動が可能なTODOに落とし込む必要があります。
  • やるべき事の概要が書いてある
    市町村のひな形マニュアルの例で、各避難所ごとに具体化することが前提です。
    (例: 「受付を準備する」)
    受付の机と椅子、置いておく備品は、それぞれどこから持ってくるのか、といった避難所ごとの具体的行動が必要です。
  • チェックリストが書かれているもの
    ただし、避難所ごとに詳細化したり修正する必要がある場合もあります。
  • 本編に班毎の概要を記載し、別途班毎のチェックリストの資料がある
    チェックリストは、地域ごとに、アクションリスト、マニュアルシートなどと呼ばれます。
    避難所ごとに詳細化したり修正する必要がある場合もあります。

1-4.分量と前提理解レベル

どこまで詳細を書くかは大きな問題です。

  • 「誰でも避難所を運営できること」を方針とし、避難所に関する知識がゼロであることを前提にすると、初心者向けに大量の説明を書く必要があります。「XXをする」というTODOリストを書いた時に、「何故そんなことが必要なのか?」という声があがった時に、きちんと説明できる必要があります。
    そのために理由や根拠、判断基準を書き出すと、ページ数が多くなりすぎ、緊急時に混乱している中で読む資料としては適切ではありません。
    サイト管理者は一度この方針でマニュアルを作成しましたが、「盛り込むべき内容」と「いかにページ数を減らして、わかりやすくするか」との戦いになりました。結論としては、この前提は無理があると考えます。
     
  • 「訓練を受けた運営委員が中心となって、避難所が運営できること」が現実的な解であると考えます。
    また、手順も意図的に細かく書かず、シンプルにまとめている傾向が見られます。どこまで細かく書くかは、運営する組織や団体ごとに検討が必要でしょう。サイト管理者は最低限のマニュアルと、手順を省き、理由や根拠だけをまとめた詳細解説用のマニュアルを分けることにしました。

避難所のマニュアルは、緊急時に沢山の人の命を守るためのマニュアルとしては特殊な存在だと思います。
病院の緊急医療のマニュアル、原子力発電所の事故対応マニュアル、飛行機の緊急時の操作マニュアル、軍隊のマニュアルなどは訓練を十分に受けた専門家が内容を十分理解した上で、緊急時にチェックのために参照されることが基本です。
一方、避難所のマニュアルは基本的には防災の素人である一般市民が使用するものです。
上記の専門家向けマニュアルについて、日本とアメリカで公開されているものをざっと見ましたが、ごく簡素なチェックリストであって、避難所のマニュアルの参考にはなりませんでした。

1-5.班構成

避難所の開設と運用は、多くの方の協力が必要な大仕事ですので、作業分担のために班を編成する必要があります。
マニュアルの記述も班単位の作業内容が中心になるため、班構成は重要です。
全体としてやるべき作業自体は基本的に同じです。班の名称が違ったり、班が分かれたり、合体したりといった差があります。
多くの地域の避難所マニュアルを見ると、一般的な班構成は以下のように分類できると思います。

  • 本部(運営本部) — 全体統括、意思決定、行政・関係機関との調整
  • 総務班 — 各班間のとりまとめ、記録、連絡調整
  • 名簿・受付班 — 避難者の受付、名簿作成、入退所管理
  • 情報班 — 情報収集・発信、掲示板管理、放送
  • 救護班 — 傷病者対応、健康相談、医療機関との連携
    (衛生班と救護班が合体する場合、救護班が無い場合もある)
  • 衛生班 — トイレ管理、清掃、感染症対策、ゴミ処理
  • 物資班 — 物資の受入・管理・配布

以下は追加される場合がある班です。

  • 施設管理班 — 総務班から独立させ、建物・設備の安全確認、居住スペース管理
  • 食料班 — 物資班から独立させる場合あり
  • 要配慮者支援班 — 高齢者・障害者・妊産婦・乳幼児等への対応
  • ペット対策班 — 衛生班から独立させる場合あり
  • 防犯・警備班 — 総務班や、施設管理から独立させる場合あり
  • 渉外・ボランティア班 — 外部支援団体・ボランティアの受入調整
    (避難所運営が長期化して対外調整が増大した時に、総務班から独立させる場合あり)

自分の住む自治体のマニュアルや他の地域のマニュアルを参考にして班構成を決めます。あまりに班の数が多いと、取りまとめが大変になりますので、話し合って決めましょう。

ただし、地域の状況によって後から変更が必要になるかもしれません。例えば「救護班」がある自治体も多いですが、実情を調べた結果、防災倉庫の備品の中に救急箱やガーゼなどもなく、医療経験者や応急医療の経験者が全くいなければ、「救護活動ができない救護班」になってしまいます。例えば、応急医療訓練を実施する、あるいは医療機関との連携役に徹し実務は衛生班が担当する、といった対応を検討します。

1-6.地域の差で注意すべき点

他の地域の避難所マニュアルには、地域特性の違いからそのままでは参考にできない点があります。

例えば、大規模地震に被災した地域では、地方自治体が情報発信や支援体制を整備済みで、それを前提とした避難所マニュアルが作られています。
一方、大規模災害が50年以上ない地域で、差し迫った災害予想がない場合は、住民の防災意識も上がらず、地方自治体も防災にかける予算の優先度も下がりがちです。防災体制が十分に整っていない地域では、先進的な地域を参考に避難所マニュアルを書こうとしても、同じようには書けない壁に突き当たります。

災害リスクの差も影響します。例えば津波のリスクがある地域では、とにかく走って逃げて来た避難者を収容することを優先し、受付は後回しにしています。一方、津波や洪水のない人口の多い都市部では、秩序をもって支援・管理運営するために、避難者の受付を最初に行うのが一般的だと思います。こうした例は他にもありますので、地域の差は常に考慮が必要です。

2.マニュアルの書き方・スタイルの検討

全ての調査や検討が終わってからマニュアルを書き始めるのでは、いつまでたっても何も作れません。
全体構成や目次を決めたあと、調査と並行して記録を兼ねながら少しずつマニュアルの執筆を進めました。その中で「実際に読んでもらえる見やすいマニュアル」にするためには、表現やデザイン面で様々な工夫と妥協点、考慮点がありました。また、印刷や資料の保守という点でも、様々な考慮点がありました。

2-1.読みやすさ

ここでいう「読みやすさ」は内容的なことではなく、「見せ方」の話です。

  • 班ごとの分冊にする
    1冊のマニュアルに全てを記載するとページ数が多くなりますので、班ごとの分冊にして担当する方が読むべきページ数を少なくする方法があります。一方、全体が見渡せなくなる、お互いの作業がわからなくなるというご意見もあります。各地域の避難所マニュアルを見ると、詳細が書かれてページ数が多い場合は、班ごとの分冊にしていることが多いと思います。
  • 「文字の大きさ(フォントサイズ)」
    ページ数を減らす(コンパクトにする)課題に対し、文字サイズは大きな影響を与えます。当初は他自治体のマニュアルを参考に12ポイントで作成していましたが、「文字が小さくて読みにくい」という指摘が複数寄せられました。避難者も避難所運営委員も高齢化が進んでいるため、これはもっともな指摘です。原則16ポイントへ変更したところ「非常に見やすくなった」と好評を得たものの、ページ数は4割程度増加しました。
    16ポイント÷12ポイント=1.33であり、単純計算ではページ数は約3割は増えます。章の切れ目が丁度良いところでページ替えができない場合もあります。大きい画像を入れる場合、改ページの位置がうまく合わず、ページ数が増加することもあります。視認性とページ数のバランスをどこで取るかは大きな課題です。

    サイト管理者の個人的な意見としては、本文は大きくするとしても14ポイント位に抑えないと、全員が嫌うページ数増加につながり、印刷コストも増加します。
  • 写真の活用
    写真を掲載すれば、文章を読まなくても直感的に手順を理解してもらえます(愛媛県松山市八坂地区のマニュアルなど、写真を効果的に取り入れた優れた事例があります)。しかし、わかりやすい構図や角度を考慮して撮影するのは容易ではなく、過去の避難訓練等での写真記録の蓄積がなければ素材を用意できないという難しさもあります。
  • イラストの活用
    写真がない場合、手順に合わせたシンプルなイラストを載せるのも効果的です。イラストがあるだけで大まかな内容が伝わり、文章にも目を通してもらいやすくなります。実際にイラストの導入は非常に好評でしたが、作成には莫大な時間がかかりました。
    画才のないサイト管理者は、AI(ChatGPTやGemini)に構図やスタイルを指示してイラスト生成を行いましたが、結果として文章を書く2倍の時間を要しました。AIは「概念的な絵」(例えば絶世の美女)を描くのは得意ですが、構図・人物の位置関係・家具の配置など「厳密な指定がある絵」を描くのは苦手です。何度も試行錯誤を繰り返すより、AIで作成した部品画像を自分で合成したり、単純な図形・幾何学的な配置図は自分で描いたりする方が効率的な場合もあります。

2-2.マニュアル以外に作成すべき資料

避難所では避難所のマニュアルだけでなく、セットとして使用する沢山の掲示物などの資料が必要になります。

例えばマニュアルに「避難所を開設したことを掲示する」と書けば、「避難所がオープンしました」といった掲示物が必要になります。マニュアルに「トイレの安全チェックをして、問題があれば使用禁止にする」と書けば、「トイレ使用禁止」、「トイレ使用可能」などの掲示物が必要になります。それ以外にも、「近隣の避難所の地図」、「怪我をした場合などの医療設備の地図」、「避難者カード」、「避難者名簿」、「体調チェックシート」、「避難所のルール」など、作成物は無数にあります。
旅行で来る外国人が多い地域、外国籍の方が住む地域では、外国語の表記も必要です。

こうした資料はゼロから作ると大変ですので、自分の住む地域または他地域の避難所マニュアルとセットで公開されている資料集を参考にするべきです。「様式集」「資料集」といった名前で公開されていることが多いです。誰でもわかりやすい絵文字(ユニバーサルデザインのピクトグラム)が入っていると良いでしょう。
このサイトでも作成した資料を、本サイトの「開設と掲示用資料」と「受付と配布用資料」のページで公開しています。

2-3.他団体の資料を作成する場合の注意点

公開されている資料を、地域にあわせて修正する場合は、必ず公開元の団体に許可を頂きましょう。

よく見かける失敗として、Googleマップの画面をそのままスクリーンショットして掲示物や配布物に使ってしまうケースがあります。Googleマップは個人閲覧の範囲を超えて印刷・配布する用途には利用規約上の制限があり、著作権法上も問題となり得ます。地図を二次利用・掲示される場合は、国土地理院「地理院地図Vector」など、利用規約で加工・複製が認められている地図データを使用されることをお勧めします。

2-4.作成ソフト

避難所マニュアルを作成するためのソフトとしては、多くの方が編集しやすくするために、Microsoft Wordで作成するのが無難でしょう。画像が多い場合はPowerPointを使用する場合もあるかもしれませんが、ヘッダーフッター、目次作成、スタイルを統一することを考えるとWordの方が分があると考えます。画像を入れる場合は、PhotoShopその他の画像編集ソフトが必要です。

一方、1枚から数枚の資料で画像が中心の資料を作成する場合は、WordではなくPowerPointその他のソフトが必要です。
サイト管理人は、地図その他の資料を正確に作成するために、IllustratorとPhotoshopを使用しています。ただし、Word利用者と比べると使用人口は圧倒的に少ないというデメリットがあります。

2-5.版管理、更新記録

避難所マニュアルやその他の資料は、色々な方のフィードバックを受けたり、机上シミュレーション、実際の訓練などで改善していく必要があります。一方、それによって考えている以上に頻繁に資料の更新が必要となります。多くの人が関わるために、資料の版管理は必須です。
2025年5月10日時点のバージョン1.4と、2026年3月3日時点のバージョン1.6の違いは何か、といった更新内容の記録もとっておく必要があります。サイト管理人は版管理は日付だけで行っていたのですが、やがてバージョンが必要になり、詳細な更新記録も後から作ることになりました。最初から版管理をして、更新記録も詳細にとっておくことをお勧めします。
AIに差分を調べさせる方法もあるのですが、思わぬ所で漏れが出る場合がありました。

ファイル名も長い日本語名を付けていると、似たような名前の資料が徐々に増えていきます。簡単に識別するためにIDを振っておくと便利です。例えば受付で使用する資料は U01, U02,… トイレ関連は T01, T02,… のようにID体系を考えておくと良いと思います。

複数の言語に翻訳した資料は、ISO が定めたアルファベット2文字の言語コード(ISO639-1)をIDにつけておくと分類しやすいです。
例: 日本: ja / 英語: en / 中国語:zh。ISOの国コード(2文字または3文字)をつける方法もあります。(日本:jp/jpn, 米国:us/usa, 中国:cn)
サイト管理人は言語コードと国コードを混ぜてつけてしまい、今更修正できなくなっています。そうならないように体系は最初にきちんとしましょう。

2-6.印刷の考慮点

  • 【片面印刷 vs 両面印刷】
    避難所マニュアルは、ある程度内容が固まった時点では、紙の枚数と厚みを減らすためには両面コピー(片面印刷)が良いでしょう。
    改訂途中の場合は、部分差し替えが容易なように片面コピー(片面印刷)がよいかもしれません。厚みは当然両面の2倍になります。
    「2-5.版管理、更新記録」で書いたように、考える以上に頻繁に資料の更新が必要となります。
    避難所運営委員会の方によって、2穴フォルダーまたはクリアフォルダーで部分差し替えをされていらっしゃいます。
    サイト管理者は、極力印刷は避けて電子媒体で見ていますが、紙に印刷する場合は片面印刷して2穴フォルダーで保管しています。紙の保存版だけは両面印刷にして、2穴フォルダーで保管しています。
  • 【印刷所への大量印刷依頼】
    避難所マニュアルやその他の資料が完成した場合、ページ数も部数も多くなります。コピー機で大量コピーするよりも、PDFを自分でWebで入稿できる印刷所(例:プリントパック、ラクスルなど)に依頼する方が安上がりの場合があります。予算が限られている自主運営の避難所では、低価格で印刷できることは大事です。2穴パンチ加工、ホチキス止めなど、オプション料金で加工もしてもらえます。
    最初に印刷所に依頼する時は恐る恐るでしたが、印刷物作成の注意点さえ事前にわかっていれば簡単です。
    PDFをWeb入稿できる印刷所では、印刷物の技術的注意点を丁寧にホームページに書いています。資料を作り始める前に、印刷する/しないに関わらず一度読んでおくとよいでしょう。印刷するとなっった場合に、後から大量に直すのは大変です。
  • 【印刷所で印刷する際の紙質選択】
    枚数や部数が多い場合は、カラー印刷と白黒印刷の価格差は小さくなります。コート紙(光沢のある紙)でカラー印刷すると、かなり見栄えがよくなります。一方、鉛筆やペンで書きこむことを前提とする場合は、光沢のある紙はメモなどを書き込みにくいので、普通紙の方が適しています。印刷所の印刷物によっては、光沢紙よりも普通紙の方が値段が高い場合もあります。(サイト管理者が実際に見積もった際はそうでした。)すべての組み合わせで同じ傾向とは限らないので、実際に依頼する印刷所で比較検討してください。
  • 【印刷所で印刷する際の画像ファイル】
    また、避難所マニュアルその他の資料を作成する時は、ファイルのサイズが大きくならないように、解像度を落とした画像を資料に添付することが多いと思います。印刷所に印刷を依頼する場合は、あまりに解像度が低いときちんと印刷できない場合があります。
    元の資料の画像の解像度をあまり下げ過ぎず、配布用にファイルサイズを小さくしたいのであれば、PDF化して配布する際にAdobe Acrobatで画像解像度を変更できるようにするのがよいでしょう。
    画像を下げる前の大きな画像は、画像を下げた画像とセットで保管しておきましょう。場合によっては印刷用に高解像度の画像に貼り替える作業も必要かもしれません。

3.災害リスクと地理的特性を理解

地域にあった避難所マニュアルを作るためには、まず、その地域でどのような災害が想定されるのかを知る必要があります。
地震、津波や洪水、土砂災害、内水氾濫(豪雨で排水が間に合わないことによる浸水)、火山噴火による溶岩流、噴火の降灰など、備えるべき災害を把握することから始めました。

3-1.ハザードマップ

全国のハザードマップは以下で見ることができます。
↗国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」
上記から各地方自治体のハザードマップに連携しています。

国土地理院ハザードマップポータルサイト画面
国土地理院ハザードマップポータルサイト

3-2.地域の特性を理解

地域の特性を検討します。
昔からその地域に住んでいる方に、昔の災害についてお聞きするのが的確であることも多く、参考になります。

  • 河川の氾濫想定区域とハザードマップの重なり
  • 液状化しやすい低地(旧河道・埋立地)の有無
  • 大雨で水が溜まりやすい(内水氾濫が起きやすい)場所
  • 崖地・急傾斜地崩壊危険箇所
  • 主要道路の寸断リスク(緊急輸送道路の指定状況)
  • 鉄道(常磐線・新京成線等)による地域分断

4.想定避難者数と特性

避難所を実際に運営することを考えると、「何人が避難してくるのか」は非常に重要な情報になります。
避難者が少ない場合と、体育館の収容能力に近い人数が集まった場合では、必要となる受付、居住スペース、通路、トイレ、物資、情報提供などの方法が大きく変わります。

また、避難者は一様ではありません。子どもを連れた世帯、一人で避難してくる人、高齢者、障害のある人、日本語での情報理解が難しい人、ペットを連れて避難する人など、さまざまな人が避難してくる可能性があります。そのため、単純な『○人を収容できる』という考え方だけではなく、どの程度の人数が避難する可能性があるか、どのような世帯が避難してくるか、避難者それぞれにどのような配慮が必要になるかを、順に検討していきます。

4-1.避難所がカバーする地域の人口 (男女数、世帯数)

住民基本台帳人口(年齢別)」は、住民基本台帳法に基づく副産物の統計情報として、ほぼ全市町村で作成されています。
住民基本台帳人口(町丁字別)」は、人口規模が大きい市では統計情報として作成されていますが、必ずしも作成されるとは限りません。
上記は、作成されていればインターネットで公開している場合が多いと思われますので、検索してみてください。

住民基本台帳人口(町丁字別)」があれば、これに基づいて避難所地域の住民登録上の人口がわかります。
例として、2026年7月末の地元では、千葉県松戸市六実1~5丁目は、3,069世帯、総人口5,955人(男2,830人、女3,125人)、1世帯あたり平均人員数は1.94人です。

「住民基本台帳人口(町丁字別)」の統計が存在しない自治体もあるため、手に入らない場合は次のような代替アプローチが必要になります。

  • お住まいの自治体のホームページで、市町村全体の人口と世帯数を調べてください。
    「市町村の人口」÷「市町村の世帯数」 × 「避難所地域の町内会の世帯数」の計算式で、避難所地域の人口が推定できます。
  • お住まいの自治体の人口・世帯数も見つからない場合は、都道府県全体の平均1世帯あたり人員から計算してください。
    お住まいの都道府県全体の人口と世帯数を調べてください。あるいは、MEMORVA『世帯数ランキング・都道府県別順位2025年』(ソース:総務省が発表した2025年1月1日現在の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」)などでも見られます。
    「都道府県の人口」÷「都道府県の世帯数」 × 「避難所地域の町内会の世帯数」 の式で計算してください。
  • さらに簡易的には、日本の1世帯当たりの平均人数 2.03人から計算することもできます。

地域毎に避難所が決まっていますが、より近い避難所があればそこに行く場合もあり、逆に近隣から避難してくる場合もあるでしょう。
それでも基本の人口は把握できます。避難所に避難する方は状況によりますがこの人口の数%だとしても、災害が長期化した場合に物資支援が必要となる在宅避難者、車中泊者も含めた人口のベースはこの人数になります。

4-2.昼夜間人口比率(通勤・通学による流入/流出)

日中の人口が多くなる地域(大規模商業地域や企業の多い地域)では、昼間人口の流入量を考慮する必要があります。
理論的には国勢調査の「従業地・通学地による人口集計」から、昼間人口(流入人口-流出人口)を把握することができます。自地域の昼夜間人口比率を確認し、日中に大規模災害が発生した場合の避難者・滞留者の増減をあらかじめ想定しておくことが有効です。

サイト管理者の避難所のある地域は首都近郊のベッドタウンであり、昼間人口の流入が少ないと想定したため、実際には国勢調査を使った計算はしていません。

  • e-Stat(政府統計の総合窓口)」トップページへアクセス
  • 統計名の選択のために、トップページの「分野から探す」で 「人口・世帯」 > 「国勢調査」 を選択します。
  • 集計項目の選択のために、「従業地・通学地による人口・就業者数・通学者数」を選択します。
  • 調査年(「令和2年国勢調査」、令和7年のデータが公開されたら「令和2年国勢調査」)を選択します。
  • 地域の選択のために、「都道府県・市区町村別の昼夜間人口」を選択します。
  • データをダウンロードして参照することができます。

4-3.高齢化率

住民基本台帳人口(年齢別)」から、各年齢ごとの男性人口、女性人口がわかります。
独居高齢者数は、要配慮者支援の基礎データとして参考になりますが、独居高齢者数は一般には公開されていません。
そのため、推定する方法としては、国勢調査の結果で地方自治体毎の世帯別の人数を取得して、高齢者の独居者人数を比率から計算するなどが必要です。
↗総務省統計局の令和7年国勢調査 (内容を2026年から順次掲載し、2027年12月に全て公開される予定です。)
↗総務省統計局の令和2年国勢調査 (公開済み)

以下は松戸市が公開している男女別の年齢別人口ピラミッド図です。

松戸市人口年齢別ピラミッド2026年3月
男女別の年齢別人口ピラミッド図

4-4.乳幼児数(授乳スペースの必要性)

住民基本台帳人口(年齢別)」から、市町村全体の乳幼児の人数を把握して、地域人口比から地域の乳幼児数を推定します。
女性専用の授乳スペース(テントなど)、男女共用の乳幼児のオムツ替えスペース(テント)などの数を計画します。
とりあえずは、1基ずつ用意することを検討しましょう。
妊産婦も要配慮者ですが、人数を想定できるだけのデータは一般には公表されていません。

4-5.障害者手帳保持者数(福祉避難所への振り分け基準)

障害者手帳をお持ちの方が避難された場合は要配慮者に該当しますが、手帳の保持者数は公表されていません。全国的な比率から推定することも可能ですが、誤差が大きいため不確実です。そのため、事前に一定の受け入れ体制を整えたうえで、実際の避難状況に応じた柔軟な現場対応が求められます。また、障害者手帳をお持ちでなくても介護支援が必要な方も多いため、市町村ごとの支援制度や福祉避難所との連携方法を確認しておくことが重要です。

4-6.外国人住民の国籍別人数(多言語対応の要否)

避難所の資料で、どの言語に資料が必要かを検討します。地域によって大きく差がありますので、市町村で公開している外国人居住者の割合があれば、多少古いデータでもそれを元に人口比率から計算しておきます。
外国人観光客が多い地域では、避難所でも外国語が必要となる可能性が高まります。

4-6-1.外国人住民の人数把握

例えば避難者数が全体で100人と仮定した場合、外国人居住者の割合から、平均的には何人が外国人住民であるかが推定できます。
また国籍がわかれば、その国の主要な言語がわかります。国籍別の外国人住民数が推定できれば、どの言語を話す避難者が何人程度いるか、という推定ができます。
ただし、日本に住んでいる外国人の方はある程度日本語が話せる場合が多く、同居している高齢のご家族が日本語が話せないということは見られます。

  • 総務省の2025年1月1日現在の住民基本台帳では、日本全体では、外国人市民の割合は2.96%です。(外国人住民数÷総住民数)(=3,677,463 ÷ 124,330,690)
  • 法務省・出入国在留管理庁の公開データによれば、国籍別の割合トップ5は以下の通りです。
国籍中国ベトナムフィリピン韓国ネパール
国籍別人数比22.6%16.5%9.9%8.6%7.3%
  • 松戸市では「松戸市多文化共生庁内推進方針」の資料から外国人市民の状況がわかります。この資料によれば、2023年時点で人口に対する外国人比率は3.79%で増加傾向にあります。その中での国籍別の割合トップ5は以下の通りです。
国籍中国ベトナムフィリピン韓国ネパール
国籍別人数比39.17%15.80%10.31%7.76%5.71%
  • お住まいの市町村で、外国人数のデータが公開されていない場合、MEMORVA『世帯数ランキング・都道府県別順位2025年』(ソース:総務省が発表した2025年1月1日現在の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」)を参照してください。
    この中に「都道府県別世帯数ランキング2025年(総計)」と「世帯数ランキング・都道府県別(外国人住民)」(都道府県ごとの外国人のみの世帯の世帯数、人口)が掲載されています。
    「外国人住民数」÷ 「総住民数 」 によって、都道府県単位の外国人市民の割合が計算できます。
    ただし、この計算では国籍別の住民数はわかりませんので、日本全国平均の国籍割合で推定が必要です。

4-6-2.言語別の資料の用意

どの言語を話す人が、どれ位の割合でいるか把握できたら、優先順位を決めてその言語の資料を準備します。
まずは翻訳をすることを考える前に、既存の資料がないかを探しましょう。

  • 避難所で必要となる、外国語向けの言語別の案内は、まず最初にCLAIR(クレア)一般財団法人自治体国際化協会のサイトを参照して、翻訳済みの資料がないか探しましょう。以下のような資料が掲載されています。
    • 多言語避難者登録カード・食材の絵文字(FOODPICT)
    • 防災・減災のための多言語支援の手引き
  • (公財)武蔵野市国際交流協会『多言語病状シート』は、外国人が「病気になった時・ケガした時」のための最初の基本的な症状を聞くためのシートです。
  • 自治体によっては、複数言語に翻訳済みの避難所資料を公開していますので、それを探しましょう。
    英語版、中国語版の順で
  • 外国語への翻訳資料を作成する場合、翻訳できる方がいればお願いするのが確実です。
    翻訳をお願いすることが無理ならば、AIや翻訳ソフトで翻訳したものが適切か確認をお願いしましょう。
  • 翻訳ソフトやAIを使用して翻訳することができます。サイト管理者は、Claude,Gemini,ChatGPTの3種類のAIに翻訳させ、それぞれの翻訳文を相互に評価させて、どれが良いか選定しました。できればその言語の母国語話者に確認して頂くのがよいでしょう。AIはアジア圏の言語翻訳は、翻訳機会が多い経済規模の大きい国(日本、中国、韓国)の翻訳は得意で、そうでない国の言語ほど翻訳は不得意なようです。ただしAIは急速に進化していますので、この傾向は変わっていくでしょう。

4-7.災害想定と避難者予測

いつ、どこに、どの位の規模の災害が訪れるかは予想不可能です。しかし、予測不可能と言って根拠もなく避難者予想数を議論していても仕方ありませんので、地方自治体の地域防災計画や、防災アセスメントがあれば、それを元に考えるのが適切でしょう。

  • 地方自治体の地域防災計画が想定する地震を把握します。
    (例:東京湾北部地震、首都直下地震等)の震度・被害想定を把握します。
  • 時間経過による避難者数の増減想定(発災直後→3日後→1週間後)
  • 想定死者数・負傷者数・建物全半壊数(避難者数算出の根拠)
  • 避難所ごとの収容定員との比較(過不足の把握)
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